2012年3月30日金曜日

双眼鏡の選び方 | 天体写真の世界


双眼鏡は多機能に使える優れた光学製品です。用途は広く、バードウォッチングや野球観戦やコンサート観劇にも 使えますし、航海の計測器としても用いられています。

もちろん、星空観測用としてもその優れた光学性能を発揮してくれます。 気楽な星空観望から彗星探索まで、双眼鏡は天体観測の分野で広く使用されています。 私も双眼鏡をいつも携行し、現地の綺麗な星空を双眼鏡で楽しんでいます。 双眼鏡が一台あれば、いろいろなシーンで重宝することでしょう。


こういう双眼鏡は避けよう

双眼鏡は用途が広いので、天体望遠鏡以上に種類があります。 そのため、双眼鏡はありとあらゆる量販店で売られていて、非常に高価な製品から安価な製品まで、たく さん出回っています。

粗悪な製品になると、双眼鏡の左右の光軸があっていないこともあります。 こうした双眼鏡を覗くと、頭がクラクラしてくることもあるほどです。 こうした双眼鏡は、たいてい高倍率をキャッチフレーズに販売されています。

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とこんな感じです。こうした双眼鏡の見え味はどのようなものでしょう。

まず双眼鏡の場合は、接眼レンズを変えることはできません(一部大型のものには変えられるものもあります)。 そのため、双眼鏡の倍率は普通は固定になっています。 この点は、接眼レンズを変えることで自由に倍率を変えることができる天体望遠鏡と 大きく異なる点です。

天体望遠鏡と同様、倍率が高くなると像が暗くなり見づらくなります。 倍率が高くなれば見やすくなるような気がしますが、像は極端に暗くなりますし、手ぶれの影響も出てきて逆に 見ていると疲れてしまいます。必要以上に高い倍率を買い求めないようにしましょう。

そういうことを考えると、100倍と言った極端な高倍率を売り文句にしている双眼鏡は、 なるべく避けるべきです。こういう双眼鏡を購入しても期待通りの性能が発揮できず、そのうち使わなくなって箪笥のどこかに しまい込んでしまうかもしれません。


双眼鏡はシビアな光学系

高い倍率を売り文句にする安価な双眼鏡は危険と言うことがわかりました。となると双眼鏡は やはり高いものなのでしょうか。

双眼鏡というと量販店で安く売られている品が多いためか、とても簡単な光学系と思いがちです。 双眼鏡の外観も、望遠鏡を二つ横に並べたような構造をしていますよね。


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しかし実際は、双眼鏡の中にはプリズムと呼ばれる光を折り曲げるガラスが入っていて、非常に 精密に加工されて組み立てられています。二つの望遠鏡をくっつけているので、二つの筒は正確に 光軸という光の軸が合っている必要があり、高い組み立て技術力が必要になります。

双眼鏡で使われているレンズの枚数も、天体望遠鏡以上に多く使われていて複雑です。 たくさんのレンズやプリズムを使うので、個々の品質が悪いと見える像は著しく悪くなります。 そのため、真面目に作ればある程度の価格になってしまいます。

そうなんです。双眼鏡であまりに安い価格では、しっかりとした双眼鏡はなかなか作れないのです。 ですので、本当に使って楽しい双眼鏡が欲しいと思えば、精度のよいレンズと組み立て技術で 作られた双眼鏡が必要で、それなりの出費が必要になってきます。


双眼鏡の価格

双眼鏡には様々なモデルがあり、値段の幅もとても広いです。 天体望遠鏡の場合には、同じ口径であればそれほど値段に差はないのですが、双眼鏡の場合は 、同じ口径でもメーカーによって値段に大きな差があります。

例えば、バードウォッチャーに人気があるライカ(Leica)やスワロフスキーの5センチの双眼鏡は、 軽く20万円以上の価格です。ニコン製の同口径双眼鏡は、高いモデルでも10万円。安いモデルだ と2万円台後半でよく売られています。どれも同じ5センチの口径ですが、ものすごい価格の差ですよね。

この双眼鏡の製造メーカーによる大きな値段の差は、どちらかというとブランドの差と言ってよい と思います。例えば、ライカの25万円の双眼鏡の方が、ニコンの高級モデルよりも見えるか というと、必ずしもそうではありません。逆なこともあります。

ただ同メーカーになると、価格が高い方が性能が良くなることがほとんどです。ニコンの2万円のモデルよりも、 ニコンの高級モデルの方が、覗いたときの像が広くてすっきりしています。

こんな話をすると、双眼鏡を買うなら10万円以上の出費が必要に思ってしまいますが、そんなことは ありません。 2万円前後で十分楽しめる双眼鏡を買うことができます。実際、私が星空観望によく使っている双眼鏡も 2万円程度の価格です。

双眼鏡はいつも手元に置いて気楽に使いたいので、最初からあまり高いモデルを買うのは やめておきましょう。


双眼鏡のスペック

双眼鏡も天体望遠鏡と同じで、口径が大きいほど取り込める光の量が多くなり、小さなところが見分けられるようになります。


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といっても、双眼鏡は手に持って見るのが普通ですから、あまり大きなモデルは不都合です。 大きな双眼鏡でも口径5センチまでにしておきましょう。それ以上の口径のモデルは、三脚に取り付けて見るのが基本となります。

口径以外に気にする点は倍率です。倍率が高くなると、当然ながら小さな物が大きく見えます。 しかしあまり倍率が高くなると像は暗くなりますし、手ぶれもし易くなります。星空観望用なら10倍前後で、 最高でも20倍くらいにしておきたいところです。

その他に重要なポイントとしては、見かけ視界があります。 これは双眼鏡を覗いたときの見かけの視界で、○○度と表されます。安いモデルはたいていこ の値が小さいため、双眼鏡を覗くと視界が窮屈に感じられます。できれば、見かけ視界が 広いタイプを選びましょう。50度以上のものをお勧めします。

ちなみにこの見かけ視界というのは、双眼鏡にはあまり記載されていません。その代わりに 実視界という値が書かれています。これは双眼鏡で見えている実際の視界の角度です。

見かけ視界は「見かけ視界=実視界×倍率」で求まりますので、双眼鏡を購入するときにはちょっと計算してみましょう。 例えば、実視界が5度で倍率が10倍なら、見かけ視界は50度となります。


ポロタイプとダハタイプ

双眼鏡は、ポロタイプとダハタイプに大きく分けられます。この二つのタイプの違いは、 プリズムの構造の違いです。 外観はダハタイプの方がスマートで、コンパクトな形をしています。 右はライカ製のダハタイプ双眼鏡です。スマートな姿をしていますよね。

昔はダハプリズムの製造が難しかったので、ダハタイプはポロタイプに比べると像が悪く、星空観望用 には人気がありませんでした。 しかし最近は、コーティング技術が改善されて、星空観察に十分使えるモデルに仕上がっています。

コンパクトさが魅力のダハタイプですが、値段がポロタイプに比べると高くなっています。 モデルによっては、倍の値段が付けられていることもあります。 デザインにこだわる方や、コンパクトな双眼鏡が欲しい方向けでしょう。 なお、このダハタイプは製造が難しいので、あまり安いモデルに飛びつくのは危険です。 信頼の置ける有名メーカー品をお勧めします。


双眼鏡で星空を見る楽しみ

双眼鏡で楽しむ星空は、天体望遠鏡とはまた違った魅力があります。 双眼鏡はその名の通り双眼で覗くので、自分の眼の延長という感覚があります。ほんとうに自然に使えるので、 自分の眼の視力が、何倍にも増したようにも感じられます。


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星空の綺麗なところに行ったとき、双眼鏡で眺める星空は格別です。 夏の天の川に双眼鏡を向ければ、白い雲のような天の川が星の集まりであることがたやすくわかります。 また、天の川の中で浮かぶ星雲も、ボンヤリと見ることができます。 こうした淡い星雲は淡く広がっているので、天体望遠鏡よりも双眼鏡の方が綺麗に見ることができます。

もちろん都会の空でも、双眼鏡を使えば普段見えない星々を見ることができます。 こうした都会で星を観察する用途には、少し高めの倍率の双眼鏡が 適しています。高い倍率だと背景が暗くなり、星が見やすくなるからです。

しかし、やっぱり双眼鏡の本領が発揮されるのは、星空の綺麗なところでしょう。 夏なら天の川に散らばった星団や星雲が見えます。冬ならオリオン大星雲が美しいでしょう。 月のクレーターや木星の縞模様も見ることができますが、こうした対象には天体望遠鏡の方が適しています。 こうした天体を見るときには、あまり期待しすぎるのはよくないでしょう。


野球観戦やコンサート観劇にも使える双眼鏡

双眼鏡の良いところは、星空以外の用途にも使えることです。 コンサートや観劇、野球観戦にも双眼鏡は最適です。 私自身たまに観劇や野球観戦などに出かけますが、その時には双眼鏡は必ず携行しています。 安い後ろの席でも、双眼鏡を使うと舞台が間近に迫ってきて迫力満点で楽しめます。

こうした用途には、少し高い倍率の双眼鏡が向いています。私は星空観望には倍率7倍の双眼鏡を使っていますが、 こうした用途には18倍のモデルを使用しています。 もし観劇や野球観戦を中心に使うご予定でしたら、15倍前後の倍率の双眼鏡をお薦めします。


手ぶれ補正機能付き双眼鏡

最近のカメラレンズには手ぶれ補正機能がよく付いていますが、双眼鏡にもこの機能が付いたモデルがあります。 こうした双眼鏡は、防振双眼鏡とも呼ばれてカメラ店などでよく売られています。 手ぶれ補正が付いているため高価ですが、魅力的な双眼鏡の一つです。

私は右上のキャノン18x50IS双眼鏡を使っていますが、この手ぶれ機能は素晴らしいものです。 双眼鏡を覗きながら手ぶれ補正ボタンを押すと、今まで揺れていた世界が止まって見えます。 機会があれば、お店で実際に触って体験してみてください。

なお、手ぶれ双眼鏡は電池も必要なので、他のモデルと比べると少し大きく重くなっています。 ですから、あまり長時間持っていると疲れるかもしれません。 一回り小さなモデルでもよいかもしれませんね。


このキャノンの18x50IS双眼鏡は、見かけ視界が67度と非常に広いタイプです。 レンズにUDレンズが使われているので、色収差も感じられず、すっきりした広い視界を楽しめます。 観劇にも使っていますが、素晴らしく綺麗に舞台を見ることができます(大きい双眼鏡なので 周りの方にビックリされます)。少し高価なモデルですが、選択肢に入れてみてもよい双眼鏡と思います。


大型双眼鏡

星空を双眼鏡で眺める楽しみを知ってしまうと、だんだんともっと大きな双眼鏡が欲しくなります。 こうした双眼鏡は、大型双眼鏡や大型双眼望遠鏡と呼ばれていて、星空観望ファンの憧れの的となっています。

こうした双眼鏡をいきなり購入する方は希なことで、たいていは数台目の双眼鏡がこのタイプとなります。 この大きさになると製造しているメーカーは限られ、ニコン、フジノン、ミヤウチ、ビクセンなどの製品が有名です。 私は右上のミヤウチの口径10センチ双眼鏡を使用しています。ミヤウチの双眼鏡は、一般にはあまり知られていませんが、 造りが良い上にコストパフォーマンスに優れています。

こうした双眼鏡を選ぶ際に注意したいのは、レンズに使っているガラスの種類です。口径5センチ程度の双眼鏡ならば、 普通のレンズでも問題ありませんが、大きくなると色収差の影響が無視できなくなります。できれば、EDレンズやフローライトレンズ を使用したモデルを選びましょう。こうしたレンズの違いは、思っている以上に見え味に響いてきます。

また、大きな双眼鏡は手持ちで見ることは不可能ですから、三脚への取り付け方法をしっかりと考えておきましょう。 いくら高性能の双眼鏡でも架台がグラグラしていては使い物になりません。購入前にはこうした点もチェックして おきましょう。



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